北海道胆振東部地震や熊本地震はまだ記憶に新しいですが、今年で東日本大震災から13年、阪神淡路大震災から29年となりました。
今回は来るべき災害への備え「総合防災力」について解説していきます。
総務省消防庁では平成20年度消防白書にて「地域総合防災力(の強化)」を提唱しています。
防衛省で言えば「総合戦闘力(の発揮)」に相当します。
強大な事柄(脅威・災害)に対し、個々(個人・家庭・地域・企業・公共サービス)のベクトルを単一方向にすることで、力を増強し対抗するイメージです。
【SABACA(自助・共助・公助)のマインドセット】
SelfーAid …自助:個人・家庭でできること
・非常持ち出し品(入れ組品は割愛します)の準備、定位置管理。
・公助が機能するまで(最低3日×人数)の糧食飲水の備蓄。
・個人救急品を準備し、それらを使用した応急手当の方法を身に付ける。※日用品を利用した即興処置を学んでおく。
・停電や有線ネットワークの切断を想定した情報収集手段、家族関係者との行動連絡手段の打合せを行う。
・断水に備え浴槽の水を貯めておく。※溺死事故を防ぐ為に小さい子供が浴室に入れないよう常にロックする必要があります。
・震災に備え家財の固定(天井との隙間に段ボールや雑誌を入れ固定、ワイヤーで壁に固定)や重い物は低い位置に収納する、予防救急を日頃から実践する。
・日頃からの体力維持。※防災散歩を行い危険箇所や集合避難場所の確認をする。
等々、物心両面の準備は数多くどれも欠かす事はできません。ですが、根底となるものは「自分の命は自分で守る」「絶対に生き抜く心構え」を意識することです。
BuddyーAid…共助:地域自治会・地元企業の備え
・防災倉庫を利用した地域防災訓練を定期的に実施することで、消火器具・破壊工具の適切な使用方法や、不足備品、必要品の見付け出しができます。
・事前の役割分担を各家庭にして置く事で、公助が機能するまでの家庭支援態勢(暖取り、炊き出し、自警・自衛消防の組織)、公助の受け入れ態勢(救援物資の均等な配布)の準備、地域の被害状況の早期把握による救助行動の実施を可能にします。
また、地域防災訓練で各人が同レベルで複数名による救急処置の技能や知識を共有することにより、自助の域を越えた救助救命活動が可能になります。
・大規模災害に伴う群発的な火災が起こった際、併設しているビルや工場の消火設備が機能を発揮しました。定期的な点検・検査を行う事で消防用設備や防災資材の維持管理を行う事は企業や施設の社会責任でもあります。
・インフラ系企業は、被害想定と応急復旧の程度を公的機関と調整しておく事で、円滑な復旧活動を行えます。
・自治会に災害時企業ができる事(屋外消火栓による消火活動ができる、復興の為に資材の供給ができる等)や、保有している危険物の禁忌や接近禁止を事前に熟知させ、円滑な支援の要請をすることも可能です。
・個人の集合体である企業は、生活基盤の復興に大きな役割(住民の社会復帰や地域再構築)を果たします。ホームセンターやスーパーマーケットの営業再開は復興の要とも言われています。
CivilianーAid…公助:地方自治体の備え、複合災害への備え
・防災ハンドブック、ハザードマップの住民への普及。
・緊急時の指揮統制、情報集約、他組織との連絡調整の訓練実施。
・救援(人員、物資)受け入れ、配置・流通配布の訓練実施。
・インフラ系企業との応急復旧の目標を事前協議。
・支援組織との事態終息(何をもって災害派遣解除とするか)点の協議。
・被災を前提とし、復興後の眺望を踏まえての復旧計画立案。
・複合災害に対して熊本県益城町では「感染症対応避難所運営訓練」を先んじて実施し、訓練結果報告を内閣府から参考情報として紹介されています。
当事者になった際、間違った選択肢を選ばない為にも、訓練は最低・最悪の状況を想定する事です。
・「想定外を想定する」防衛省自衛隊に限らず、官民全てが持つべきマインドセットです。
【復興の段階】
1、ライフライン(電気、ガス、水道、通信)の復旧
2、生活基盤(交通、建築、生活インフラ)の復興
3、避難所から自宅へ
4、平穏な生活を取り戻し精神面での復興。次の災害への備え。
13年前、29年前と比べ技術は着実に進歩していますが、全ての施設がその技術を反映しているわけではありません。今後想定される大規模地震は「南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、首都直下型地震、中部圏・近畿圏直下型地震」があります。
個人・企業・公共サービスの連係を密に、防災・減災の備えを万全にして「総合防災力」を強化し事に臨みましょう。