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以前に紹介した、兵士にとって最も必要な適性というのが「理不尽への耐性」です。

軍人や自衛官というのは、猛烈な暑さや寒さ、眠れない、休めない、食べられない、飲めない、自由もない、娯楽もない、さらに苦行の様な厳しい訓練を続けられる、そういった任務を遂行する上で過酷な環境下でもやっていける適性が求められてきます。

ただ、それだけでは実際には不十分で、第2段階として必要なのが、「戦闘適性」です。

「~事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います」

自衛官が入隊式で宣誓する「服務の宣誓」です。

自衛官や軍人が他のどの職業とも違う点が、いざというときは己の命を失っても任務を遂行する点です。

つまり自衛官は、明日命令が下って、「いつ死んでも全く後悔しないという本気の覚悟を持っているのか」が問われている職業と言えます。

これはどんなに精鋭部隊にいたとしても、どんなに体力があって、射撃も技術も優秀であっても、実際の命を懸けた任務を遂行出来なければ、恐怖や極度のストレスによって、体調不良、心理的な影響、判断力や思考力の低下などで任務続行が不可能になったり、場合によってはそれが原因で部隊全体を危険に晒す事になる可能性もあります。

また帰国後にPTSDを発症して社会問題を引き起こす事にもなります。

実際、PKOに派遣された自衛官の中には、PTSDを発症した人も少なからずいる現状です。

私の経験上、戦地や紛争地にただそこに居るだけでストレスを感じる人は、そもそも戦闘適性に不向きな傾向にあると考えています。

これは実際に戦闘をしている状態ということではなく、紛争地に派遣されて、そこでの日常生活だけでもストレスを感じてしまうという状態のことです。

ただ、本当に戦闘に向いているかどうかは、訓練や選抜である程度はふるい落とせますが、最終的には実際に戦闘に参加してみなければ分からない部分もあります。

私を含め、アフガニスタンに派遣された同じ部隊にいた同僚の中には、PTSDになった人はほとんどいませんでした。

私は戦地に居る時や戦闘など経験しても、そこに居続けることによるストレスはほとんどありませんでした。

むしろやりがいや充実感の方がずっとありました。

これは私だけではなく、まわりの同僚に聞いても同じ感じでした。

また我々は実際に激しい戦闘を数多く経験し、同僚からも多くの死傷者が出ました。

私の部下の一人は、頭部を狙撃されて弾はヘルメットが止めたものの、頭部にかなりの衝撃を受けました。数センチずれていれば死亡していたものでした。

その他にも銃撃や砲撃を受けて重傷を負った仲間達はたくさんいましが、そういった仲間の死や負傷を含む極度のストレスを受けた者がいたにも関わらず、それでもPTSDになった者は私のまわりでは聞いたことはありません。

これは元々、軍隊に志願する段階において、戦地に派遣されることは了承済みであり、それでもなお入隊し、さらにそこから地獄のような厳しい訓練や選抜を潜り抜けて、鍛え上げられたフランス陸軍でも最精鋭部隊である第2外人落下傘連隊の猛者たちだからこそ、出来たことだったと思います。

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