日本人にとって戦争や紛争は、ほとんど関心がなく他人事でした。
その上、自国の安全保障にさえ無関心です。
それは非常に残念なことですが、それだけ日本は平和だということです。
最近のロシア軍によるウクライナ侵攻によって、ようやく多くの日本人も国防について関心が出てきました。
身近な脅威が現実になったことで、ようやく実感が湧いてきたのだと思います。
日本は東日本大震災など多くの天災を経験してきましたが、もしこれらが他国からの攻撃だったなら国防に対する国民の意識はもっと劇的に変わっていたと思います。
私はこれらの大震災は確かに惨劇ですが、天災ゆえに防災ばかりが取り上げられて、日本の国政の根幹たる国防がおざなりになってきた現状が不安でした。
東日本大震災での活躍によって、自衛隊は阪神淡路大震災の時以上に知名度を上げました。
今や誰しもが自衛隊の存在を否定する人はいないでしょう。
しかしここで大きな落とし穴があります。
ほとんどの国民は自衛隊という存在がどういったものなのか実はよく知りません。(とうか知ろうとしない)
自衛隊は災害救助隊ではありません。
自衛隊の本来任務は国防です。
つまり本質は戦闘部隊です。
災害派遣はもちろん重要な任務ですが、何よりも優先すべきことは国防であり、災害派遣は副次的な任務なのです。
(確かに東日本大震災での自衛隊の全国規模の大規模部隊運用や日米共同活動は、そのまま戦時有事体制に通用するものであり、自衛隊の能力が非常に優れていることが世界的に証明されました。)
しかし国民は果たしてどこまで理解しているでしょう。
自衛官自身も同じことが言えます。
阪神大震災以降、自衛隊の活躍を知って「人を助けたい」と入隊してきた若者が多くいます。
東日本大震災での活躍によって自衛官を目指す若者が入隊していますし、今後も増えていくでしょう。
でも彼らはどこまで自衛隊の本質を理解しているのか。
災害派遣や人助けがしたくて入隊した自衛官が、もし半年後にアフガニスタンやシリアなどの紛争の最前線に派遣され、交戦の可能性が高い任務に果たしてどう考えるでしょうか。
また今回のウクライナ戦争のように日本が他国に侵攻されて戦場になった時、本当に戦える覚悟があるのか。
「私は人助けがしたくて自衛隊に入ったんです。戦場に行くなんて聞いていません」というのは通用しません。
だったらなぜあなたは自衛隊に入ったのですか?
人助けをしたいないら、なぜ消防や警察などの救助隊に行かなかったのですか?
もちろんすべての自衛官がこうだとは言ってません。
例え死んでも必ず日本を守るという強い責務や使命感を持つ自衛官がほとんどだと思いますが、でも中にはこういった人が少なからずいると思います。
またこれから自衛隊に憧れて入隊を希望する若者にも言えます。
今こそ、そういったことを現実として見つめ直す良い機会だと思います。
自衛隊は世界の多くの国の軍隊と違い、専守防衛が主任務です。
専守防衛とは、つまり本土決戦のみで国防を行うということです。
先の大戦では本土決戦は沖縄のみで行われ、大変な被害となりこれ以上の被害拡大を防ぐために降伏しましたが、自衛隊はこれを本土決戦を主体で行うということです。
国土が焦土化するまで戦うということです。
まさにウクライナの現状がそのことを証明しています。
従って、自衛官が負っている任務は、国家対国家の総力戦における大規模戦闘を日本国内で防衛するということです。
つまり、沖縄戦の様な大激戦を主任務としていることであり、それがどれだけ凄まじいかを想像して下さい。
米軍が行ったアフガンやイラク戦争の様な、対テロや対ゲリラ戦などの低強度紛争とは比べ物にならない、最新鋭の戦闘機や戦艦、爆撃、核攻撃など含む総力戦を行う激戦に臨むことが宿命となっているのが自衛隊です。
アフガンやイラクの戦闘における米軍兵士の損害はこれまで数千数万程度の戦死者でしたが、自衛隊は自衛官、日本国民を含む数十万、数百万単位で死者が出る大規模総力戦を行うということです。
ウクライナでは兵士だけでなく、多くの国民が死傷し、何百万という人々が家や故郷を失い、国外へ避難しています。
それが専守防衛ということです。
はっきり言って自衛官は米軍などが行った様なアフガンやイラク戦争なんて楽勝だと思えるくらいでないと、とても務まらない激戦を行うことが仕事だということを、自衛官や日本国民はどこまで理解しているのか。
これが日本の現実であり、自衛隊の現実です。