基本降下課程を修了し、中隊配属後に私は歩兵戦闘の基本である「小部隊戦術課程」を6週間受ける事になりました。
この教育は、いわゆるSUT(Small Unit Tactics)の基本教育であり、当初の3週間は駐屯地での基礎訓練で、FAMAS(5.56mm小銃)、PA MAC50(9mm拳銃)、MINIMI(5.56mm軽機関銃)、ANF1(7.62mm機関銃)、12.7mm重機関銃、FRF2(7.62mm狙撃銃)、PGM(12.7mm狙撃銃)、AT4(携帯式対戦車ロケット)、LRAC(89mm無反動砲)、LGI(てき弾発射器)の10種類の銃火器を学び、さらに大量の実弾射撃や至近距離射撃、その他には、各種射撃照準機器(ダットサイトやショートスコープ、レーザー照準機など)、暗視眼鏡(微光暗視、サーマルなど)、無線機の取扱い、軍隊格闘術、地図判読、NBC(核、生物、化学兵器)、識別(外国製戦車や装甲車両の兵装や特徴の暗記)、手信号、空挺降下、山地行軍、障害走、水泳(迷彩服着用)など充実した内容でした。
さらに応用訓練では、演習場で3週間野営して(風呂なし、天幕なし、全食戦闘糧食)、小部隊戦術基礎、銃器操法(ガンハンドリング)、各種隊形と移動手法、各種地形の通過要領、射撃と運動の連携からの攻撃前進~突撃~戦果確認、捕虜の取扱いと検索要領、接敵時展開要領(コンタクト・ドリル)、交戦時離脱要領(ブレイク・コンタクト)、監視、屋内戦闘、市街地戦闘、ヘリの搭乗と展開、戦闘時における負傷者搬送と離脱、偵察、待ち伏せ、襲撃、追跡法と対追跡法、掩体構築、検問から拘束・取り調べ・暴徒鎮圧、手榴弾を使ったブービートラップの仕掛け方と検索法など受けました。
自衛隊の様な陣地攻撃や防御、対戦車戦、砲迫戦などの重戦力型の正規戦ではなく、アフリカの武装勢力や欧州での対テロ戦、治安維持などに対応した軽歩兵での小部隊による対人戦闘が中心となった教育でした。
どちらかというと、自衛隊でいうレンジャー教育の様な遊撃戦、対遊撃戦に近い内容でした。
自衛隊ではまずやらない事や各種専門教育に行かないと受けられない様な訓練も全員に修得させるのは外人部隊が歩兵戦闘に非常に力を入れていると感じました。
また、技術的な教育の他に体力的にも厳しく、不眠不休や重量物運搬、夜通しでのコンパス行進(歩くのではなく、走る)など肉体的にも精神的にも新兵教育以上に厳しいものでしたが、非常に高度で、かつ体系化された内容で感動しました。
ちなみに教育中に助教のある伍長が訓練生の新兵全員と要員含めた中で誰がミニミ機関銃の分解結合が早いか競争しようと提案してきました。
安全点検から分解して結合し、最後に安全点検までしての一連のタイムを競い、一番早いタイムから一秒遅い毎に残り全員1回ずつ腕立て伏せをやるというものでした。
もちろん、その伍長は余裕の笑みで現時点において暫定トップのタイムでした。
当然、他の同期達は伍長のタイムに全く届かず、最後に私の番となりました。
私は自衛隊でみっちりと訓練を受け、ミニミ機関銃を扱って来ましたし、自衛隊の後期教育の軽火器課程でも分解結合はトップでしたので、今回も急がず普通にやったら一番になりました。
その伍長よりも軍歴や扱ってきた時間も私の方が長かったので当然と言えば当然でした。
でも伍長達はえらく驚いていました。
フランス語もろくに話せないアジア人の新兵に負けたのだから。
そして、私が全員の前に立ち、「1、2、3・・」と数えて行く中、その伍長が悔しそうな表情で腕立て伏せをしていたのが面白かったです。
※その伍長は非常に優秀な方で、後に軍曹に昇進し、2019年に行われた欧州スナイパー競技会で見事に優勝しました。