私が所属していたのは、フランス外人部隊で唯一の落下傘部隊である第2外人落下傘連隊が駐屯する、地中海に浮かぶコルシカ島カルヴィにある「キャンプ・ラファリ(ラファリ駐屯地)」でした。
私はここで7年間過ごしました。
私の人生で二番目に長く過ごした場所で、私にとって故郷の様な大切な場所です。
信じられないくらい綺麗な海と山に囲まれた自然豊かところです。
私が配属されたばかりの当時は、昔気質な厳しさがまだまだ残る非常に過酷な営内生活でした。
営内生活における長である小隊の伍長達は、まさに鬼伍長達であり、その指導や規律、しごきは尋常ではありませんでした。
昔の自衛隊の先輩後輩の上下関係とは次元の違う、旧日本軍を彷彿とされるほどのまさに「ザ・軍隊生活」という言葉がぴったりの日々でいた。
他の外人部隊の連隊もフランス正規軍に比べると格段に厳しい方ですが、特に私が所属していた第2外人落下傘連隊はその中においても飛びぬけて超絶的に厳しいことで有名でした。
入隊する多くの新兵たちは日本人も含めて、こうした想像を絶する日々の生活の厳しさに心が折れて脱走して行く人が後を絶ちません。
新兵の内は、土日の休日はあってないようなもので、営内生活の責任者である週番伍長の指揮下で、様々な掃除や雑用、恒常業務などに駆り出され、休む暇はありません。
また、新兵は一挙手一投足を観察され、少しでも不備があったり、怠けたり、同期に隠れて手を抜いていたりしていると伍長の目が光り、大変な反省の罰が与えられます。
例え万が一、外出が許可されても入隊5年未満は私服禁止の制服外出で、アイロンがけを死ぬほどやって更にそれを点検されて合格して、ようやく駐屯地を出られても外出範囲は非常に限定され、行ける場所は最寄りの小さい街まで、その街以外の遠出は禁止。
綺麗にアイロンされた制服を汚したり、皺にならない様に気を付けながらの行動は非常にストレスでした。
しかも街中で休日の上官達やMP(外人部隊の憲兵)達に常に見張られて気の休む時間もない、とても自由な時間に羽を伸ばせる空気ではありませんでした。
さらに営内の居室には、テレビもない、娯楽もない、携帯電話禁止、ゲーム機禁止、パソコン禁止、インターネット禁止で、新兵は土日もなく雑務などでこき使われ、伍長のシゴキや無茶難題をやらされ夜も満足にベットで寝ることもできず、一年間に二度しか外出できなかった年もあったりしました。
日常の訓練や体力練成においても、ずば抜けた体力を求められるので非常に厳しく、体力不足でついて行けないものなら更なる地獄のシゴキと反省で寝れない日々が待っています。
隊員食堂の食事は不味く品数も少なく、シャワーは設備不良でお湯は出なかったり、水量も異常に少なかったりして、冗談抜きで本当に刑務所で生活していると変わらない日々でした。
そのため、第2外人落下傘連隊は、通称「アルカトラズ(アメリカにある監獄島と呼ばれる刑務所)」の別名を持つほど外界から隔離された島にある駐屯地で、とても過ごしやすい楽しいところでした。