
フランス外人部隊は、平時の部隊生活では非常に厳しい規律や躾などで囚人のような日々を送り、訓練や体力面でもかなり過酷で、それらに耐えられずに辞めて行く人は数えきれません。
戦死傷者が多く発生するような激戦となる戦争や紛争に出ると、水を得た魚の様に勇猛果敢に戦い活躍する精鋭部隊として有名です。
外人部隊には、世界130カ国以上から志願して来ますが、先進国からの志願者は戦場や冒険、人生の再チャレンジを求めてというものが多く、先進国以外の志願者については母国より高い給料やフランス国籍取得などが多いというのが、いつの時代でも同じ様な傾向があります。
どんな理由で志願するにせよ、彼らのほとんど全てに共通することは、わざわざ母国以外の軍隊で厳しい規律と訓練を受け、戦場へ派遣されることを承知したうえで志願して来るということが、他の軍隊よりも戦闘耐性が比較的に高い傾向の理由と考えられます。
他国や赤の他人にために命を懸けられる人は当然、母国や家族のために命を懸けられます。
しかし、母国や家族のためなら命を懸けられるという人は、他国や赤の他人のために命を懸けられるかというと、多くの人は正直難しいと答えるでしょう。
だからこそ、どんな理由であれ、外人部隊に志願して来る人はある一定の覚悟を持って来ます。
そんな外人部隊に入隊するには、大きく3段階の選抜があります。
『第1段階』
外人部隊に志願するには、必ずフランス国内にある募兵事務所もしくは南フランスのオバーニュにある第1外人連隊に直接出向いて受付を行う必要があります。
そして、受付後は辞退するか、不合格になるまで一切、外部との接触は出来なくなり、軟禁状態となります。
つまり、外人部隊に志願するためには、合格出来るかは不透明なまま、仕事を辞め、決して安くはない航空券と滞在費用を捻出し、言葉も通じない外国であるフランスへ行き、生きて国に帰れる保証は全くなく、運良く帰れても数年間は戻れない、全てを捨てて挑戦する覚悟が必要になって来ます。
例えば、特殊作戦群の選抜がどんなに厳しいと言っても、志願する上で自衛隊を辞める必要もないし、不合格でも原隊に戻って以前と同じ様に勤務でき、失敗しても再チャレンジ出来ます。
その一方、外人部隊に志願するということは、不透明で先の見えない中を片道切符で挑むことであり、もし不合格になれば、ただの無職となり、全てを失い、元の職場にも戻れない、そんな残酷な世界が待っています。
そういう意味では、特殊作戦群の選抜を受けるより、ずっとハードルが高いと思います。
また、フランス外人部隊は時代によって変化しますが、これまでに世界各地の戦争や紛争地に派遣され、戦闘による死傷や訓練での事故死などで多くの殉職者を出している本物の軍隊です。
そんな世界に全てのキャリアを捨てて、飛び込もうするには相当の覚悟が必要です。
外人部隊に志願して来た時点で、それ自体が最初の大きなふるい落としとなっています。
生半可な覚悟では、到底志願することは出来ません。
現在はスマートフォンやSNSなどで情報も簡単かつ大量に入手可能ですし、現役隊員がSNSなどで情報発信して、直接情報を聞くことも出来ます。
しかしそれ以前の時代では、ほとんど情報もなく、どんな世界かも未知数であり、本などの体験記くらいしか無かった状態で志願するということが、どれだけハードルが高く大変だったかということです。
私自身、あれだけの努力して、全てを捨てて挑戦して、もし不合格になっていた場合、自衛隊にも戻れず、途方に暮れて絶望していた、そんな世界線もあったかもしれません。
今考えると、本当によく挑戦出来たなと感心するほどです。
実際、こういう世界に興味がある人は、100人に1人くらいはいるかもしれませんが、本当にこの世界に志願して来る人は、100万人に1人だけという現実があります。
このスタートラインに立つことすらなく、諦めたり、出来なかった人がほとんどだということです。
『第2段階』
募兵事務所での仮選抜が1週間あり、オバーニュの本部での本選抜で2週間〜3週間の審査があります。
ここでは、犯罪歴や健康診断、知能テスト、性格テスト、体力テスト、面接など、入隊するための最低限の基準値に達しているかを判断する選抜審査を受けます。
通称「ゲシュタポ」と呼ばれる面接では、生まれてから現在までの人生を全て聞き取り調査されます。
それらを複数回、実施され入念に審査されます。
この選抜で80〜90%は不合格となります。
ここでは文字通り、朝から晩まで刑務所の囚人と同じ環境で徹底的に管理され、行動の自由を完全に制限された生活をすることになります。
各種テストや審査以外では、労務に駆り出されるか、塀で囲われた広場で1日中待機していなければならず、シャワーも1日1回60秒までと決められ、トイレに行くにしても許可が必要となります。
この段階では、あくまで書類上や健康面、最低限度の身体能力を判断して合否を決めているだけで、体力的、精神的に厳しい選抜は次の段階からとなります。
『第3段階』
オバーニュで合格後にスペイン国境近くのカステルノダリにある第4外人教育連隊に運ばれます。
そこで約1週間ほど各種体力検定、水泳検定などを含む準備期間をおいて、演習場の廠舎の様な場所で約5週間の過酷な選抜訓練が実施されます。
まず、そこでは腕時計を全員没収され使用禁止となり、時間感覚が麻痺した状態で、今後の予定もプログラムも分からないまま、突然の指示で対応しなければならず、1秒先に何が起こるか未知数のまま一瞬も気の抜けない状態が続きます。
そこでは、長距離走や障害コース走、行軍、丸太運びなどを行い、肉体的にも精神的にも過酷な訓練が行われます。
食事は最低限しか食べられず、時にはほとんど手を付けてない内に強制的に食事を打ち切られ、食堂の外に追い出されて散々シゴキに合う日々が続き、徐々に栄養不足で痩せていきます。
(なかにはゴミ箱の残飯を隠れて食べたりする人もいます)
毎晩、交代で不寝番に立つために睡眠時間が削られますが、まだ僅かでも寝ることできればマシな方で、時には深夜に強制的に叩き起こされて冷たい池に入ってずぶ濡れにされ、様々なシゴキでズタボロにされたりします。
銃や装具、背のうを背負っての行軍では、その速度は時速7kmとほとんど駆け足状態で、いつ、どのくらいの距離をどの経路でどこまで行くのかも全く分からないまま、ひたすら歩き続けます。
ついて行くのもやっとの速度の上、いつ終わるかも分からないゴールの見えない行軍は、肉体的にも精神的にも、かなり辛いものとなります。
行軍中の小休止も1時間ごとだったり、3時間ノンストップだったりとランダムで、足のマメも潰れて血まみれとなり、痛みを我慢しながら、体力と精神力の限界まで追いつめられます。
ここでも多くの志願兵が脱落して辞めていきます。
行軍の距離は、回数を重ねるたびに増えていき、合計で150km弱を歩き終えた後、ようやく選抜を乗り切り、正式に「志願兵」から「外人部隊兵」と任官することになります。
ただし、まだこの段階では仮採用であり、さらにレッドマーチと呼ばれる120km行軍を含む約3ヶ月間の訓練を終えて、最終的な入隊の意思確認をして部隊配属が決まったら、ようやく本当に正式採用となります。
この段階まで来ても、意志崩れを起こして入隊を辞退する人も多いです。
部隊配属後は、さらに厳しい試練がたくさん待っており、超体育会系の軍隊生活と厳しい規律に耐え、数々の特技課程や専門課程を修了し、複数の海外派遣で実戦を経験し、それらを乗り越え、初回の5年の任期を無事に終えられる人はあまり多くはありません。
その間に半数以上の人が、殉職や脱走などで脱落して辞めて行きます。
同じ部隊に配属になった私の同期達も、最初の5年間で半分が殉職や脱走で部隊を去りました。
この様に、外人部隊の道は非常に厳しい道を歩むことになりますので、正直あまりお勧めできませんが、それでも諦めずに挑戦する人は、本当に勇気があると思います。
