自衛隊の最大の問題点の一つは、米軍ばかり盲信して、他国(アメリカ以外の西側の大国)の軍とほとんど交流しないことです。(最近は少しづつ他国との交流も増えては来ていますが)
自衛官の多くは、米軍の装備や訓練をお手本にして色々学んだり、自衛隊の装備や訓練の不満を言って、やっぱり米軍は素晴らしいと過度に考えている方が多いです。
では、アメリカの年間の軍事費はいくらかご存知ですか?
なんと約66兆円です。
世界第2の中国さえ、約23兆円です。
ちなみに日本の防衛費は約5兆円です。
これでも日本は世界トップ8位くらいの予算規模です。
米軍は世界第2の中国の約3倍、日本の約13倍の予算規模です。
日本と比較して、そもそも予算や規模でまったく桁違いである米軍をモデルにするのは到底無理な話です。
一部だけ真似ても、後方支援や全体のパッケージを含めた巨大なバックアップ体制がなければ機能しないことを全く理解していないです。
それが無ければ本来の能力を発揮できません。
でも、そんな予算は日本では捻出できません。
だったら予算や規模、スタイルが似ている英軍やフランス軍など米軍以外の欧州の先進国を参考にした方が遥かに良いと思います。
もちろん欧州の軍をお手本しろということではありません。
問題なのは、米軍以外の他国軍との交流や知識が欠如し、幹部でさえ欧州の軍隊についての知識が皆無な点です。
なにも全世界の軍を知れということではありません。
せめて国連の安全保障理事会に所属している西側の大国である英軍やフランス軍について知っておくべきです。
自衛隊幹部でさえ、英軍やフランス軍の階級章ですら、まったく知らない現状です。
以前、私が予備自衛官訓練に出頭した時に自衛隊幹部(2等陸佐)と話す機会があり、私がフランス外人部隊にいたことを知ると、なんと彼に「傭兵やってたの?」と言われました。
私はすぐに「違います。外人部隊はれっきとしたフランス正規軍であり、傭兵ではありません」と言いました。
まだ陸士や陸曹ならともかく、幹部しかも2等陸佐でさえ、フランス陸軍の編成も知識もないことに愕然としました。
これでどうやって国際活動や海外派遣での協力や共同活動、交流ができるのか?
海外の唯一の自衛隊の拠点があるジブチはフランスが宗主国です。
アフリカでも最も影響力を持っているのがフランス軍です。
また自衛隊はアフリカで活動しているのに全くフランス軍の知識も協力、交流もほとんどありません。
アフリカで何かあれば、必ずフランス軍の協力が必須になってきます。
2011年にアフリカのコートジボワールという国の日本大使館が反政府武装勢力に襲われた時に日本の大使を救出したのはフランス軍です。
カンボジア内戦でも、フランス軍担当地域で彼らに守られて自衛隊は活動していたのは事実です。
フランス軍は予算も兵力人員もほとんど日本と同じ規模です。
それなのにフランス軍は米軍抜きで、単独で世界規模で展開できる能力を持っています。(自国民の救出などや、友好国の救援など)
それにまったく関わりのない国ではなく、もともと日本は明治時代にフランス軍をお手本にして装備や訓練を行ってきた歴史的に深い関りを持っています。
しかも現在でもフランス式の制度や文化が自衛隊に残っています。
例えば、自衛隊の階級の区分の分け方は、兵(士)、下士官(曹)、士官(幹部)というフランス軍方式です。
ちなみに米軍はEnlisted(兵、下士官)、Warrant Officer(准士官)、Officer(士官)です。
また陸上自衛隊の普通科連隊など部隊編成も連隊の下に中隊で構成されているのもフランス軍方式です。
米軍は連隊、大隊、中隊という編成です。
それ以外でもフランス軍は、戦車や戦闘機などは最新兵器なのに、個人の装備や銃は旧式で、長年国産小銃にこだわって30年以上更新しない、物品管理が厳しいなど本当に自衛隊にそっくりでした。(ここ数年でフランス軍は個人装備は劇的に良くなりましたが)
この様に自衛隊は米軍以外にも予算規模の近い国の現状をもっと知る努力が必要だと思います。
盲目的になるのではなく、多くを知ることで自衛隊がどういう現状なのかを正確に分析できるようになると思います。