今回は水害後実施する防疫(ぼうえき:伝染病を予防し、その侵入を防ぐ事)を記述していきます。
復旧作業は「堆積土の撤去」「生活基盤の再構築」「被災地の消毒」となります。
防疫で重要なことは『掃除をよく行い、清潔に保ち、平時の生活よりも衛生面に気を配ること』です。
作業後は汚れの除去・手洗い・うがい・洗顔・消毒を確実に行って下さい。
水が引いた後、堆積土(汚泥)は塵埃となり舞います。浸水した住宅の家具や柱、コンクリートにはカビが生えます。破損した物の撤去作業で怪我をすることもあります。避難所ではストレスにより免疫力が低下し感染症を罹患するかもしれません。更に害虫が発生します。
ですが一番気に掛けて欲しいのは、病原菌が他の災害よりも多く存在することに他なりません。
・堆積物(汚泥)の対処…河川からの流入物だけでなく、動物の糞尿、下水、廃棄物の液体と様々なものが混ざった堆積物の処理となります。作業する際は、防塵マスク・保護メガネ・ゴム手袋の着用を心掛けて下さい。
・水没品の選定…氾濫した水には多くの病原菌やカビの栄養源が含まれます。それらを含んだ木材は菌の増殖には適切な状態となります。洗浄できない・乾燥できない場合は廃棄をお勧めします。
※家電製品等は砂や砂利、不純物を含んだ水分が残っている場合がほとんどです。そのまま通電すれば、故障や発火の原因となります。
・住居、庭の消毒…片付け清掃が完了し一見きれいに見えても、病原菌・ウィルスの除去には至りません。通常であればアルコール除菌で済ませてしまうところですが、「塩化ベンザルコニウム」の噴霧・拭き上げ、「次亜塩素酸ナトリウム」を含んだ消毒液での踏み込み消毒等を行ってください。また、土壌庭等には消石灰(水酸化カルシウム)を撒くことで消毒することが可能です。
※自衛隊の災害派遣(水害、鳥インフルエンザ)でも使用される消毒剤です。
※生石灰(酸化カルシウム)ではありませんのでご注意下さい。。
・怪我をした場合…破傷風になる可能性があるので、傷口を清潔な水でよく洗い消毒を行い保護します。創部が大きい場合は直ちに医療機関で受診して下さい。
・防疫ラインの形成…食事や生活をする場所に、外から汚れを持ち込んでしまっては元も子もありません。ガムテープ等でエリア毎にラインを作り、共有者に周知徹底します。
1(汚染ライン)、外を完全に汚染地域とし、服をはたいたりブラシで靴を擦って泥や埃を落とすエリア。玄関ポーチ等、泥を水で洗い流せる設備があれば適。
2(準汚染ライン)、汚れた衣服等を脱ぐエリア。洗濯物があればビニール袋で覆い運ぶ。衣服を脱いだ後にマスクや手袋を廃棄できれば理想。玄関等外部と扉で隔たりがある所が適。
※踏み込み消毒槽を設置するのであれば、このエリア前に設置。
3(準清潔ライン)、除菌消毒を行うエリア。手洗い・うがい・洗面を行う。生活で共有する場所なのでなるべく清潔を保つようにする。洗面所等。
4(清潔ライン)、生活をするエリア。清掃を良く行い、清潔を保つ。
・避難所生活において…慣れない環境、人の密集した場所での生活はストレスが多くなります。日光浴や体操を行ったり、食事においては緑黄色野菜やチョコレートを摂取することでストレスの軽減になります。また、感染症や各種食中毒が発生した場合は爆発的に伝染しますので、体調がすぐれない場合は早期の受診が必要です。
・害虫の発生…堆積土によって土壌に栄養が行き渡り、虫の活動が活発になります。害虫が感染症の媒体になることもありますので、早期の消毒が必要です。
天災は忘れた頃ではなく必ずやってきます。被災する前にハザードマップや連絡手段「災害Wi-Fi SSID:00000JAPAN(ファイブゼロ ジャパン)」の確認、防災用品の定期的な点検を確実に行ってください。
行方不明者の早期発見、災害派遣従事者の安全・早期収束をお祈り致します。