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4月20日、アフガニスタン東北部の山岳地帯の奥深くにあるドワコレイという村での任務でした。

そこは我々の支配地域を越えて、さらに北へ5kmほど行った完全な敵の支配地域でした。

その村において、民事工作部隊や連隊長、アフガン警察軍(ANP)などが入って村長や有力者と会合や食事会をしつつ、情報交換や情報提供者の獲得、タリバンに関する情報の聞き取り調査を行いました。

また毛布やノート、えんぴつなど支援物資を渡し、衛生兵による医療活動等による民心獲得工作を展開していました。

第1小隊が村の近くにある高い山の上に展開して全体を監視・警戒し、私が所属する第4小隊は村よりさらに敵方である北へ1kmほど前進して展開して後方の村内にいる民事工作部隊を防護していました。

我々は村のかなり手前で装甲車から下車後、徒歩による潜入を行い、展開していていました。

車両部隊は、村より後方である南に援護するようにして展開していました。

アフガン警察軍の主力もそこに展開していました。

我々第4小隊は、完全に前方に突き出した形で展開し、完全に孤立した状態でした。

今回、私の任務は対戦車ミサイルの射手として、第4小隊の主力より少し後方の小高い丘の上で、長距離狙撃班と共に援護と敵の監視・警戒をしていました。

私の分隊は、歩兵として近接戦闘を行うこともあれば、対戦車ミサイルなどで狙撃支援をしたりと、任務に応じて役割を変えていましたが、今回は対戦車ミサイルで狙撃支援を行うことになりました。

我々の部隊が展開している村より、さらに2kmほど北にさらに大きな村があり、そこがこの地方の敵の本拠地の一つであると睨んでいた。

その時、私の位置から2300m先のあの大きな村にたくさんの集団が集まっているのが見えた。

しかし、7倍率のスコープでは2000m以上の詳細な識別は難しい状態でした。

すると砲兵部隊のFO(前進観測員)が60倍率の監視装置で確認し、それがAK47ライフルやRPG7ロケット砲などで武装した40名ほどの集団だと確認しました。

我々も一気に緊張し、いつでも射撃可能な様に身構えました。

もう少し敵が近づくか、私があと300m前進すれば射程に入り、これだけ密集しているところに撃てば、たとえ対人用ではないミサイルでもかなりの敵を倒すことができると思いました。

しかし、連隊長の命令は「待機、そのまま監視を続行せよ」でした。

現在、村内において連隊長以下、民事工作部隊が活動中で、そんな時に戦闘となれば工作が失敗してしまうので、それが終わるまで待てということでした。

しかし、そんな悠長なこと言っている場合ではないという懸念を私は考えていました。

今までは多くても十数人で、今回40名ものタリバン兵がこれだけ集まっているのは、今だかつてありませんでした。

そうしている内に敵は複数のグループに分かれて散って行きました。

敵は肉眼でも我々が双眼鏡で見るのと同じくらいの視力の良さで2000mの距離からもはっきり見えるらしく、巧妙にこちらから見えない経路を通って接近して来ました。

それでも優秀な監視機材を持っている我々はどんどん敵の情報を挙げて行きますが、敵が我々を取り囲むように展開しているのが分かりました。

いよいよ、敵は1600mほどの距離をとって北、東、西に広く展開していました。

このままでは敵に優位な位置を取られ、囲まれてしまう。

しかし、わたしは黙って見ているしか出来ませんでした。

私は前方約1650mにいる敵4名の一人にしっかり十字線を当て、いつでも撃てる様に照準し続けていました。

射撃許可さえあれば、いつでも撃てる状態でした。

見える、はっきり見えている。

「早く射撃許可を 」と心の中で叫んでいました。

しかし、すでに敵を発見してから約2時間が経っていました。

私は次々と報告されてくる敵の情報を聞きつつも前方の敵に照準し続けました。

私の隣には、12.7mm大口径狙撃銃の狙撃手も同じく敵を狙っていました。

山頂にいる第1小隊もそれは同じでした。

次から次に敵情が報告される。

東の小高い丘に敵が十数名機関銃や無反動砲を持って登っている、西にはすぐに谷があり、それを越えた先の小高い丘にも敵が展開していました。

前方の北にも、複数の敵が見え隠れしていて、いつまでこの状態を続けるのか分かりませんでした。

そんな状態が続き、我々の集中力も落ちてきた頃、ようやく民事工作部隊が村から引き上げようとしていました。

連隊長も同じく車両部隊に向けて引き返した時でした。

突然、静寂を破る銃声が聞こえました。

その瞬間、猛烈な銃撃と爆音が辺り一体を支配しました。

私がいる位置にも、とてつもない数の銃撃、銃弾が掠める音、地面に突き刺さる音、さらに砲撃やRPG7ロケット砲の爆発などが襲い、私は一瞬照準を中断して周囲の状況を確認しようとしました。

敵は北、東、西から一斉に十字砲火を我々に浴びせてきました。

敵は無線機を持っているため、我々が思ったよりずっと戦術的な行動が出来る様でした。

敵からの迫撃砲と無反動砲の砲撃、さらに機関銃で掃射され、身動きが取れなくなっていました。

我々は、まさしく袋の鼠状態で正面と左右からの銃撃を受け、無線から仲間達の混乱ぶりが手に取るように感じられました。

我々第4小隊は孤立した上に、敵の十字砲火をまともに受け、このままでは間違いなく全滅する可能性がありました。

ようやく立ち直った小隊長の射撃許可を受けて、私が安全装置を外して撃とうとしました。

しかし敵も馬鹿ではなく、いつまでも身を晒しているわけではなありません。

すでに敵は視界には捉えられない。

私は、見えない相手に撃つのをためらってしまいました。

私は今まで狙った標的は100%命中して来ました。

外したことは一度もなく、撃つなら確実に当てるという信念があり、見えない敵に対して撃つのはプライドが許しませんでした。

しかし今回それが仇になってしまった。

私は、撃つタイミングを逃してしまい、私の心の中は悔しさと後悔でいっぱいでした。

あらゆる方向で敵の銃撃を受けながら、私は必死に敵を探しました。

その時、私は敵を捕らえました。

敵は地面に伏せて射撃をしていました。

私は安全装置を外して、射撃許可を受けて今まさに撃とうとしたその時でした。

山頂にいる第1小隊が対戦車ミサイルを射撃しました。

まっすぐ私の狙う敵に向けてミサイルが飛んで行き、私が見ている前で炸裂しました。

地面に当たったミサイルが火の矢となって炸裂し、さらにその勢いは止まらず角度を変えて遥か彼方へと飛んで行きました。

それによって私が狙っていた敵は消し飛んでしまい、私はさらなる別の敵を探しました。

しかし、心の中では私のターゲットを盗られたという思いがありました。

東の丘からは、敵の無反動砲と複数の機関銃掃射が、我々第4小隊を狙っていました。

前方の敵は、隠蔽経路を通って徐々に接近をして、すでに600mの距離に来ていました。

西からは、最も近くて300mほどの距離に敵が近づいて来ました。

大量の銃撃下で、我々は一旦、村の後方に下がることになりました。

このままでは包囲されて全滅するかもしれない。

我々は、敵の機関銃射撃が地面に這うように炸裂する中を、お互いに援護しながら必死に走って後方に下がりました。

あれほどの銃撃を受けて、今だに無事でいること自体、信じられないことでした。

その一方、車両部隊に対しても敵の迫撃砲が集中して、そこにいるアフガン警察軍がパニックになって、RPG7や機関銃を手当たりしだいに射撃していました。

それで、よりにもよって我々がいる位置に撃てって来ました。

後方である南に配置しているアフガン警察軍が、前方である北に向けて撃って来て、我々は敵から正面と左右から撃たれ、その上に友軍であるアフガン警察軍から背後を撃たれて、こちらも大混乱でした。

まさか味方からの友軍相撃とは思ってもいませんでした。

我々は村の離れの3、4軒の小屋に立てもこもって身動きがとれませんでした。

ようやく車両部隊の人間が、アフガン警察軍に射撃を止めるように指示して、なんとかそれは無くなったものの、状況は未だに危機的状況でした。

工作部隊と連隊長は、村から出る瞬間に狙い撃ちされましたが、警護部隊が盾となってなんとか無事に車両部隊まで引き上げました。

連隊長は護衛に引きずられるようにして、連れて行かれる様な格好となりました。

よく死ななかったと感心しました。

普通あの状況では、死んでもおかしくなかったと思います。

連隊本部ですらそんな状態で、指揮系統もかなり混乱していました。

任務中は無線の周波数は、一系統で運用していいましたが、現場に展開していた全部隊が戦闘状態となり、情報があまりに錯綜して中隊長も指揮・命令に苦戦していました。

私はそんな中、敵を捕らえても、敵は走って移動してはすぐに隠れてしまい、射撃できるタイミングが非常に難しい状況でした。

そして、車両部隊からの重機関銃の支援射撃や我々のベースキャンプであるCOPにいる砲兵部隊の120mm迫撃砲の支援射撃で、敵も徐々に後退して行きました。

我々は約1kmを相互援護しつつ後退して、ようやく車両部隊に合流出来ました。

しかし、まだ任務はまだ終わっていません。

ここに一晩展開し、敵を警戒監視をする。

明日また敵を捜索して掃討する。

すると雨が降り出しました 。

ずぶ濡れになり、冷え込む夜をひたすら監視を続けることとなりました。

明日もまた激しい戦闘となりました 。

今回の戦闘で一人の死傷者も出ませんでした。

しかし、これは本当に奇跡でした 。

本当に一つ違えば、小隊は全滅していたかもしれない、そんな戦いでした。

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