
米陸軍には、「レンジャー」と称されるものが2つ存在していますが、それらは何が違うのかはあまり知られていません。
それが、第75レンジャー連隊(U.S.Army 75th Ranger Regiment)とレンジャー学校(Ranger School)です。
第75レンジャー連隊は、陸軍特殊作戦司令部(U.S.ASOC)所属の特殊部隊であり、空挺学校を卒業した後に約8週間のRASP(Ranger Assessment and Selection Program:レンジャー評価および選抜プログラム)を修了すると部隊配属となり、左肩に部隊章として「レンジャースクロール」が付けられます。
レンジャー学校は、全職種から入校が可能であり、約8週間のレンジャー課程を卒業すると左肩に「レンジャータブ」が付き、卒業後は原隊に戻って行きます。
これらの違いは、「RASP」は特殊作戦要員になるための選抜課程であり、レンジャー学校は基本的に小部隊戦術とリーダーシップを養成することを目的としています。
米陸軍において「米陸軍レンジャー」とは「RASP」を修了して「レンジャースクロール」を持っている者を指します。
レンジャー学校を卒業して「レンジャータブ」を持っているものを米陸軍ではレンジャー隊員とは認められていません。
レンジャー学校はあくまでもリーダーシップ養成機関であり、特殊部隊である第75レンジャー連隊所属の隊員のみが、レンジャー隊員として認められています。
米軍では「レンジャー」と名乗ると、「(第75レンジャ―連隊の)どこの大隊にいたの?」と聞かれたりするので、「レンジャータブ」しか持っていない人だと恥をかくことになります。
第75レンジャー連隊の隊員も部隊配属して数年後にレンジャー学校でレンジャー課程を受けます。
でもこれは階級が上がり、下士官となって改めてリーダーシップを学ぶために入校します。
陸上自衛隊にもレンジャー教育はありますが、米陸軍の考え方で言えば、レンジャー学校の教育課程に近いものとなります。
陸上自衛隊のレンジャーもあくまでもMOS(特技資格)であり、リーダーシップや小部隊戦術、遊撃戦などの教育を受けることを目的としています。
教育が修了すれば、原隊に戻って行きます。
米軍の基準で言えば、レンジャー隊員とは言えません。
米陸軍のレンジャーは、特殊部隊の選抜と養成課程を修了し、部隊に配属され、特殊作戦要員として任務を行います。
陸上自衛隊ではレンジャーは資格であり、レンジャー部隊は存在しないと一般的に言われています。
しかし日本で唯一、所属隊員の全てがレンジャー修了を義務としている部隊が存在しています。
それが第1空挺団です。
水陸機動団などにおいて、レンジャー小隊や偵察中隊(レンジャーと洋上潜入修了者のみ)、火力誘導中隊など、小部隊のレンジャー有資格者のみの部隊はありますが、連隊や団単位すべてがレンジャー必須なのは、第1空挺団のみです。
空挺団でも陸士はレンジャーは持っていませんが、陸士はあくまで見習いの状態で、陸曹・幹部は全員義務です。
(しかも空挺は、陸士の割合が他の部隊に比べてもかなり少ない状態です)
教育プログラム的には、陸曹教育課程、空挺レンジャー課程、降下長課程の全てを受けるのが一連の流れになっています。
そういう意味では、確かに装備や訓練面ではまだ完全ではありませんが、第1空挺団は米陸軍レンジャー連隊に並ぶ能力を有していると考えられます。
もし出来ることなら、第1空挺団を完全に特殊部隊化して、基本降下課程修了後に、「RASP」に相当する選抜課程を創設したり、装備も訓練面も海外の特殊部隊と遜色ないものへ更新して、第75レンジャ―連隊をカウンターパートして運用して頂きたいと考えています。
