2012年、私は狙撃小隊にて長距離狙撃課程を受けました。
フランス陸軍の狙撃課程は、基本的に2種類あります。
一つ目は、分隊狙撃課程(Tireur de Precision)、略してTPと呼ばれる戦闘小隊に所属している分隊狙撃手です。(米陸軍で言う、いわゆるマークスマン)
戦闘分隊の一員として、約800mまでの中距離狙撃を担当します。
TPはフランス製7.62mm狙撃銃FR-F2というすでに30年以上前から使われている狙撃銃を扱います。
今後ドイツ製のHK417に切り替わる予定です。
もう一つは、長距離狙撃課程(Tireur d’Elite)、略してTEと呼ばれ、フランス製12.7mm狙撃銃であるPGM Hecate Ⅱを使用し、所属は偵察戦闘支援中隊(CEA)の狙撃小隊(Section Tireur d’Elite、略してSTE)で、約1800mまでの長距離狙撃を担当します。
分隊狙撃手は、歩兵中隊の戦闘小隊の一員として行動しますが、長距離狙撃手は射手と観測手、分隊長の2~3名の少数で部隊主力から離れて完全に独立して敵地深くで隠密に作戦行動を行い、敵の動向を監視し、情報収集を行います。
第2外人落下傘連隊の第4中隊では、フランス軍で唯一独自でスナイパー課程というものもありましたが、現在では行われていません。
分隊狙撃課程は、落下傘連隊や歩兵連隊、工兵連隊などでも受けられ、比較的数も多く、志願して適性があれば分隊狙撃手になるのもそれほど難しくはありません。
しかし、長距離狙撃手課程は、落下傘連隊(歩兵)と歩兵連隊の狙撃小隊(各歩兵連隊に一個小隊のみ)に所属している隊員でしか受けることは出来ず、非常に狭き門です。
私も以前に分隊狙撃手課程を受けていましたが、中隊長に頼み込んで、運よく長距離狙撃課程を受けることが出来ました。
第2外人落下傘連隊の狙撃小隊においては、創設から現在まで長距離狙撃課程を受けた日本人は私だけの様です。
ただし、第4中隊のスナイパー課程を受けた日本人は過去3人いて、現在も所属している日本人隊員のスナイパーがいますが、彼は歴代日本人の中で最も優秀なスナイパーです。
私が当時教育を受けた時は、長距離狙撃課程が開始される前に1週間の選抜試験を受けて、合格した上位8名のみが射手として参加を許されました。
合格したものの、射手に選ばれなかった者は観測手として教育を受けることになりました。
私は運よく射手として教育を受けられることになりました。
狙撃は慣れていましたが、射程1800mの12.7mm口径のフランス製狙撃銃PGMは、非常に優秀ですが、クセが強くて本当に大変でした。
銃の重量は、眼鏡(スコープ) を合わせて約17Kgもあります。
主要な教育項目は、射撃(Tir)、地図判読(TOPO)、通信(Trans)、戦術(Tactique)で、その他に偽装や潜入、観測、近接格闘、拳銃射撃などありました。
教育期間中は、ほぼ睡眠時間はありませんでした。
フィナーレは、最終想定終了後に、いきなり土のう袋を顔に被せられ、両腕を後ろ手に拘束されて捕虜となり、長時間膝立ちで水を浴びせられ、寒さで震えが止まらず、罵声と暴行を受け続けました。
さらに一人づつ二人がかりで両腕の関節を決められて連れ出され、真っ暗な中でアラビア語風の男に尋問と脅迫を受け、顔を水槽に突っ込まれて溺死寸前までの拷問を一晩中受けた後、翌朝に一睡もせずに射撃テストを行いました。
とても充実していて、楽しかったです。